一日に京都薪能へ行きました。演能中の写真はだめなので、始まる前に一枚だけ取りました。
久しぶりの京都薪能はお天気も良くて、例年お天気が心配なのですが、今年は最後まで安心して見てられました。
さて、今年は60周年の記念の年と言うことで、翁からはじまりました。
「能にして能にあらず」と言われる翁はストーリーも無く、ただ、天下太平 五穀豊穣を祈る神事だといってもいいでしょう。
今年の私の見所はこの「翁」のみ。そういってもいいでしょう。
まずシテの翁を勤められたのが、私の師匠の井上裕久氏、端正な姿と、魅力的な謡いは天下一品です。そして、もう一つは3人そろう小鼓。親子三人の共演は見事でした。真ん中のお父さん、その両側に長男と次男。長男の方とはまだ修業時代に一度だけイベントの催しでご一緒させていただいたことがあります。また次男の方は我が家の次男の小学校の同級生と、浅からぬ縁がある方々。立派に成長された姿を拝見できました。そして三番三を勤めた茂山良暢は、茂山忠三郎家の跡取り。いわゆる茂山家とは別の系統になりますが、茂山家とはまた違った味のある演技が私は好きです。
翁の楽しみには色々ありますが、その一つが囃子方の演奏の妙味。独特のリズム、特に一定のリズムを打つ小鼓とそれに割って入るような大鼓のリズム、これがなんとも言えず心を打ちます。お正月の三日に祇園さんで金剛流で毎年奉納されますが、観世流の翁を見るのは久しぶりでしたが、お天気も上々でいい翁を見ることができました。
この後、絵馬(半能)、火入れ式のあと杜若、そして茂山千作、千之丞兄弟に、茂山忠三郎の長老三名による福の神。平均年齢はゆうに80歳を越えているでしょう。普段は面をつけるシテの福の神が千作さんの直面でした。もう自らがそのままで福の神でしょう。
そして最後は金剛流による「正尊」。観世流とはちょっと配役が違っていて、しかも起請文を読むのが弁慶で戸惑いましたが、さすがに舞金剛の異名のようにすばらしい立ち回りを見せていただけました。
京都の薪能はどこよりもロケーションがいい様に思います。バックには松の代わりに大極殿を模した本殿、回りを回廊が取り囲み、東山の峰峰がまじかに見え、後ろを振り返ると楼門の上には半月が・・・。
久しぶりの薪能、たっぷりと堪能できた一日でした。